犬と猫を一緒に飼っている人や、猫に間違えてドッグフードを買ってしまったときなど、猫にドッグフードを食べさせたことがあるという人は少なくないと思います。
では猫にドッグフードを食べさせても問題はないのでしょうか。「猫にドッグフードを与えると失明する」という噂も聞いたことがありますが、それは本当なのでしょうか。
今回は猫にドッグフードを与えるとどうなるかをまとめてみました。疑問に思っていた人は参考にしてください。
お品書き♪
猫にドッグフードを食べさせても大丈夫?
結論から言うと答えは「NO」です。猫と犬は同じ哺乳類で同じペットに分類されがちですが、体の構造も必要とする栄養素も違います。
ですから継続的に与えると、ある栄養素が不足または過剰摂取になり健康を損なう可能性があります。
ドッグフードとキャットフードの違い
栄養素の点からみて、ドッグフードとキャットフードはどのような違いがあるのでしょうか。栄養素別にみていきましょう。
タンパク質
犬は肉食とも雑食ともいわれていますが猫は完全な肉食動物なので、特に動物性タンパク質は欠かすことのできない栄養素です。
タンパク質は筋肉、臓器、皮膚、被毛、血管など体をつくる重要な栄養素で猫にとっても犬にとっても大切ですが、猫は体質上犬の1.5~2倍のタンパク質を必要とします。
犬・猫・人間の主な栄養素の必要量(1kg当たり)
犬 | 猫 | 人間 | |
---|---|---|---|
タンパク質 | 4.8g | 7.0g | 1.2g |
カルシウム | 242mg | 250mg | 10mg |
鉄 | 0.65mg | 2.5mg | 0.155mg |
ビタミンA | 75IU | 250IU | 32IU |
ビタミンD | 8IU | 25IU | 2.8IU |
ドッグフードは犬が必要とする栄養素の量で作られているので、猫がドッグフードを食べ続けるとタンパク質が不足して最悪の場合は昏睡状態に陥ることがあります。
タウリン
タウリンは猫にとって必須栄養素(体内で生成できない栄養素)のひとつです。網膜、心臓、神経、生殖などの形成に重要な役割を担います。体内で生成できないので食事から摂るしかありません。従ってキャットフードにはこのタウリンが多く含まれています。
一方犬はタウリンが体内で生成されるので、入っていたとしてもキャットフードよりも少ない量です。タウリンが不足するとタウリン欠乏性網膜変性症(進行性網膜萎縮症)や心筋症になるといわれています。
ナイアシン
ナイアシンはビタミンB群の一種で、タウリンと同じ必須栄養素です。犬はアミノ酸からある程度生成されますが、猫は生成率が非常に低いため食事から摂る必要があります。キャットフードにはドッグフードより多くのナイアシンが配合されています。
ナイアシンが不足すると下痢や衰弱の症状がみられ、20日以上全く摂取しないと死亡することもあるほどで、これは犬よりも深刻だといわれています。
ビタミンA
ビタミンAも同じく必須栄養素で、網膜、粘膜、生殖機能、免疫作用の働きを持ちます。人間や犬はβカロチンからビタミンAを生成できますが、猫は腸内ジオキシゲナーゼという物質が欠乏しているため生成できないので、上記の表に用にビタミンAを犬より多く必要とします。ビタミンAが不足すると眼疾患、皮膚疾患、繁殖障害等が起こります。
猫がドッグフードを食べると失明するって本当?
上記で説明したように、猫がドッグフードを食べると不足してしまう栄養素があります。特にタウリンは不足するとタウリン欠乏性網膜変性症(進行性網膜萎縮症)を起こす可能性があります。網膜変性症は一度発症すると回復は期待できず、最終的には失明するといわれています。
「猫がドッグフードを食べると失明する」というのはあながち間違いではないですが、栄養不足からなる病気の可能性のひとつに、網膜変性症があるということで「猫がドッグフードを食べる」=「失明する」ではありません。
猫がドックフードを食べ た場合の対処法
基本的に食べさせてはいけない食材は犬も猫も同じなので、ドッグフードに猫が食べてはいけないものが入っていることはありません。食べたからといってすぐに対処しなければならないということはなく、数回与える分には全く問題ありません。前述したような病気の可能性は、あくまでも長期的に継続して与えた場合に限ります。
猫にドッグフード!まとめ
「犬と猫は同じじゃないの?」と思っていた人も、ドッグフードとキャットフードは違うということがわかっていただけたと思います。犬と猫の必要とする栄養素が、こんなにも違うのかと驚いた人も多いのではないでしょうか。これからはちゃんと区別して与えてくださいね。
ちなみに猫が多く必要とするタウリンやナイアシンは、魚介類に多く含まれています。犬は肉、猫は魚のイメージはこういうところからきているのですね。