人間にとっては体にいいものでも、構造上犬の体に悪い作用が働くものはたくさんあります。玉ねぎやチョコレートは、犬に食べさせてはいけないことで知られていますが、悪いものすべてをみなさんはご存知でしょうか。中には知らないで与えてしまって、具合が悪くなったということも少なくないのではないでしょうか。
あまり知られていないようですが、最近になって、犬にブドウを与えてはいけないといわれているようです。では、ブドウ中毒の詳しい原因はいったいどこにあるのでしょうか。
ブドウの危険性
ブドウを犬に食べさせると、中毒症状や急性腎不全を起こす可能性があるといわれています。それは何故かというと、実は詳しい理由がはっきり解明されていないのです。では、理由がわからないにもかかわらず、どうしてブドウは犬に悪いといわれているのでしょうか。
それは症例として、複数の報告があがっているからです。中には死亡した例もあります。
参考:ブドウ摂取後に急性腎不全を発症して死亡した犬の1例
参考の事例では、「中毒物質としてブドウに付着したカビ毒、農薬、ビタミンD類似物質、重金属の他、環境中の毒物やブドウの未知の成分などが疑われているが、まだ同定されていない」としています。
結局、因果関係はよくわかっていないようです。体重2.5kgのマルチーズが約70gのブドウを食べたとありますが、これは人間で例えると、体重50kgの人が約1.4kgのブドウを食べたことになります。通常人間は食べない皮ごと食べているようなので、人間との比較も難しいですね。
ただ、ブドウを食べても何も異常がない犬もいるので、すべての犬に当てはまるということはないようです。しかし、中毒を起こす犬がいることは事実としてあるので、ブドウは食べさせない方が賢明です。
ブドウ中毒の症状
全ての犬に起こるものではないですが、ブドウ中毒をおこした場合、次のような症状が出ます。
中毒症状として
ブドウを食べてから2~3時間で、中毒症状が現れるといわれています。
- 嘔吐、下痢
- 腹痛
- 元気がない
急性腎不全の症状として
ブドウを食べてから2~5時間で症状が現れるといわれています。
- 吐き気、嘔吐
- 脱水症状
- 食欲がない
- 背中を丸める(腎臓の痛み)
- 尿が出ない
- 意識低下
急性腎不全とは?
腎臓は、血液中の老廃物や毒素をろ過する役割を持っています。それが、何らかの原因で機能しなくなる病気を腎不全といいます。腎不全が悪化すると、高カリウム血症や尿毒症を引き起こし、命を落とすこともあります。
腎不全には、急性腎不全と慢性腎不全があります。急性腎不全は突然起こり、数時間から数日で状態が悪化する非常に致命的な病気です。
ブドウの種類と危険な量
ブドウの種類はデラウェア、マスカット、巨峰など全種類で、果肉よりも皮の方が危険とされています。また、生のブドウよりレーズンの方が、中毒性が高いようです。
量は、体重1kgにつきブドウ30g、レーズンならそれ以下といわれています。つまり、体重5kgの小型犬ならブドウ1房(150g)ということになります。では1粒2粒くらいなら大丈夫なのでしょうか。
先に述べたように、詳しい因果関係がわかっていません。先の参考例にもありましたが、「過去の報告では20g/kg相当のブドウを食べて発症した例もあり」とあり「発症例の摂取量を超えるブドウを食べても発症しない犬がいる」ともしています。
結局、自分の飼っている犬がブドウ中毒を起こす犬にあたるかどうかは、食べさせてみないとわからないということです。そんな危険なことはしたくないですよね。詳しいことがわからない以上、少量でも食べさせない方が無難です。
ブドウを食べてしまったら
置いてあるぶどうを勝手に食べてしまった、あるいは知らずに食べさせてしまった場合はどうしたらよいのでしょうか。
すでに症状が出てしまっている場合は、すぐに動物病院で診てもらいましょう。症状が出ていない場合も、腎不全になってからでは遅いので動物病院での診察をおすすめします。その場合、ブドウを食べた時間、量、状態(皮ごと食べたなど)、食べた後の症状などを、できるだけ詳しく説明できるようにしておきましょう。
犬とぶどう(ブドウ中毒)についてまとめ
犬にブドウを食べさせてはいけない本当の理由は、わからないことにあるのかもしれません。もしかしたらブドウそのものではなくて、ブドウに付着していた何かだとすれば、ブドウ以外でも中毒の可能性があるということですから。
玉ねぎの場合「玉ねぎに含まれるアリルプロピルジスルフアイドという成分が、血液中の赤血球を破壊する」とか、チョコレートの場合「カカオに含まれるテオブロミンが中毒を引き起こす」などのように、原因とする成分がわかっていれば納得できます。
とにかく現時点では、ブドウを食べるとブドウ中毒をおこす「可能性がある」という曖昧な表現しかできません。しかし、危険かもしれない以上は食べさせない方が賢明です。この進歩した現在の世の中でも、まだまだわからないことはあるのだなと実感しました。